製造業で注目されるデジタルツインとは?IoTとの違いや活用例、導入の進め方を解説

デジタルツインは、設備保全や生産性向上を支える技術として製造業で注目されています。製造現場では、人手不足や設備の老朽化を背景に、設備や工程の状態を効率的に把握し、保全や改善につなげる取り組みが求められています。デジタルツインは、現実の設備や工程をデジタル空間上に再現し、実際の設備から取得したデータと連携させることで、状態の可視化や分析、シミュレーションに活用できる技術です。

本記事では、デジタルツインの基本的な仕組みやIoTとの違い、製造業における活用例、導入の進め方について解説します。

デジタルツインの定義と構成要素

デジタルツインとは、現実の設備や工程をデジタル空間上に再現し、実際の設備から取得したデータと連携させながら、状態の把握や分析、シミュレーションに活用する仕組みです。「ツイン(Twin)」の名のとおり、現実世界の設備や工程と、それに対応するデジタル上のモデルを結び付けて扱うことが特徴です。

デジタルツインは、主に次の3つの要素で構成されます。

1. デジタルモデル

設備や工程をデジタル上で表現するモデルです。設備の形状や構造、動作、性能などを再現し、CADデータなどを活用するケースもあります。なお、デジタルツインのデジタルモデルは必ずしも3Dモデルである必要はありません。設備の状態や動作、性能を表現できれば、さまざまな形態が考えられます。

2. 現実の設備から取得するデータ

設備や工程の状態を把握するためのデータです。IoTセンサや各種デバイスを利用して、温度、振動、電流、圧力、稼働時間などを収集します。重要なのは、多くのデータを集めることではなく、対象設備や課題に応じて必要なデータを取得することです。

3. データを処理・分析するシステム

収集したデータを処理し、分析する仕組みです。取得したデータをデジタルモデルと連携させることで、設備状態の可視化や異常傾向の分析、シミュレーションなどに活用できます。デジタルツインは、デジタルモデル・設備データ・分析システムを連携させることで、現実の設備や工程を継続的に把握・分析する仕組みといえます。

IoTとの違い

デジタルツインと混同されやすい言葉に「IoT」があります。
IoTは、設備や機器などをネットワークに接続し、温度や振動、電流などのデータを取得・送信する技術です。一方のデジタルツインは、取得したデータをデジタルモデルと連携させ、設備や工程の状態把握や分析、シミュレーションに活用する仕組みです。例えば、設備の状態をセンサで取得し、画面上で監視するだけであればIoTを活用した設備監視といえます。一方で、取得したデータをデジタルモデルと連携させ、将来の状態予測や運転条件のシミュレーションに活用する場合は、デジタルツインの考え方に近くなります。

例えばコンベヤの軸受温度が80℃になったとします。
IoTでは、「現在80℃です」という状態を把握できます。
一方、デジタルツインでは、過去の温度推移や稼働時間、振動データなどを組み合わせて分析し、「2か月後に異常が発生する可能性が高い」といった予測や保全計画の検討に活用できます。

製造業でデジタルツインが注目される3つの理由

1.設備状態を可視化できる

製造現場では多くの設備が同時に稼働しているため、設備ごとの状態を把握するには手間がかかります。デジタルツインを活用することで、設備の稼働状況や温度、振動、負荷などの情報をデジタル上で一元管理できるようになります。現場へ直接確認に行かなくても設備状態を把握できるため、異常の早期発見や迅速な対応につながります。

2.設備保全を効率化できる

設備の突然の故障は、生産停止や修理コストの増加につながります。デジタルツインは、設備の状態を継続的に把握し、保全業務の効率化を支援する技術として活用されています。設備停止リスクの低減や計画的な保全につなげやすいことも、注目される理由の一つです。

3.生産性向上や業務改善につながる

デジタルツインは、設備監視や保全だけでなく、生産工程の改善にも活用されています。例えば、搬送ラインの速度や設備の運転条件を変更した場合の影響を、実際の設備へ反映する前にデジタル上で検証できます。改善案の比較や効果検証がしやすくなるため、生産性向上や業務改善にも役立ちます。

製造業におけるデジタルツインの代表的な活用例

生産ラインの稼働監視

複数の設備が連携する生産ラインでは、一部設備の停止が全体の生産性に影響を与えることがあります。センサやカメラで取得したデータをデジタルツインと連携することで、設備の稼働状況やラインの進捗を把握でき、ボトルネックの特定や改善活動に活用できます。

実際に、設備データを活用したデジタルツインによって設備状態を継続的に分析し、異常の兆候を早期に把握することで、ライン停止による時間やコストの削減につながった事例もあります。

設備保全と予兆保全

設備から取得したデータを継続的に監視することで、設備の状態変化を把握できます。

例えばベルトコンベヤでは、

  • モータの状態
  • 軸受の状態
  • ベルトの蛇行
  • 温度
  • 電流値

などを監視対象として検討できます。
これらのデータを分析することで、異常の兆候を把握し、点検や保全計画の検討に活用できる場合があります。
ただし、デジタルツインを導入しただけで故障時期を正確に予測できるわけではありません。対象設備に適したデータと分析手法を組み合わせることで、設備状態の把握や保全業務の効率化に活用できます。

環境・安全管理

製造現場では、設備の状態だけでなく作業環境の把握も重要です。例えば、粉じん濃度や温度、気流などのデータを取得することで、設備周辺の環境変化を把握できます。こうしたデータを設備情報と組み合わせて分析することで、改善活動に活用できる場合があります。
ただし、環境・安全管理ではデータを収集するだけでなく、基準や社内ルールに基づいて適切に評価・対応することが重要です。

デジタルツイン導入の進め方

1.課題を明確にする

まず、デジタルツインで解決したい課題を整理します。

例えば、

  • 設備停止を減らしたい
  • 設備保全を効率化したい
  • 生産ラインの状況を把握したい

など、導入目的を明確にすることが重要です。

2.対象設備・工程を選定する

目的が明確になったら、対象設備や工程を選定します。最初からすべての設備を対象にするのではなく、停止による影響が大きい設備や状態監視の効果が期待できる設備から取り組むことで、導入効果を確認しやすくなります。

3.必要なデータを取得する

課題解決に必要なデータを選定し、適切なセンサで収集します。
例えば設備保全では振動や温度、電流などのデータが重要となり、生産ラインの状態把握では稼働時間や搬送速度なども活用されます。

4.データを可視化・分析する

取得したデータを可視化し、設備状態や運転状況を把握します。さらにデジタルモデルと連携することで、異常傾向の検知や将来の状態予測、保全計画の検討などに活用できます。

5.運用体制を整える

デジタルツインは導入して終わりではありません。収集したデータの活用方法や異常発生時の対応ルールを整備し、設備停止時間や設備稼働率などの指標を確認しながら継続的に改善していくことが重要です。

まとめ

デジタルツインは、現実の設備や工程をデジタル空間上で再現し、実際の設備データと連携させながら状態の可視化や分析を行う仕組みです。単なるIoTによる設備監視とは異なり、取得したデータをデジタルモデルと連携させることで、分析やシミュレーションなどにも活用できます。製造業では、生産ライン監視や設備保全、環境管理など幅広い用途への活用が期待されています。そして、その実現には設備状態を正確に取得するためのIoTや各種センサが欠かせません。

まずは自社の課題を明確にし、小規模な取り組みから始めて効果を確認していきましょう。

\センサを活用したデジタルツイン事例/

デジタルツインで活用するデータは、対象設備や解決したい課題によって異なります。まずは設備状態を把握するために必要なデータを取得し、分析やシミュレーションへつなげていくことが重要です。

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