位置センサの選び方|設備停止リスクを抑えるための考え方
クレーンや搬送設備では、安全停止や自動運転を実現するために、設備の位置を適切に管理することが重要です。位置センサには、エンコーダやレーザー測距センサ、リミットスイッチなど、さまざまな機器が用いられています。これらの機器は、精度だけでなく、粉じんや高温、振動、雨、雷などの使用環境や、故障時の復旧のしやすさも考慮して選定する必要があります。特に設備停止による影響が大きい現場では、保守性や長期的な運用性も重要な判断基準となります。
本記事では、位置センサに用いられる主な機器の種類や特長を整理し、設備停止リスクを抑えるための選定ポイントについて解説します。
位置センサにはどのような種類があるのか
位置センサにはさまざまな種類があり、設備の現在位置や移動量を検出する役割を担っています。代表的な位置センサとして、エンコーダ、レーザー測距センサ、リミットスイッチなどが挙げられます。
これらは、位置情報を電気信号として取得する電子式と、機械的な接点などによって位置を検出する機械式に大きく分けて考えることができます。
方式 | 主な装置例 |
|---|---|
電子式 | エンコーダ、レーザー測距センサ、変位計など |
機械式 | リミットスイッチなど |
製品・構造による | 位置発信器、開度計など |
エンコーダ
回転量や移動量を電気信号として出力し、位置や速度を高精度に検出する装置です。連続的な位置情報を取得できるため、自動運転や高精度な位置センサに活用されています。停止位置の管理や移動量の把握が求められる設備で広く採用されています。
レーザー測距センサ
レーザー光を利用して対象物までの距離を測定する装置です。非接触で測定できるため、位置管理や設備監視などの用途で使用されています。離れた場所からでも測定できることから、移動体の位置監視や距離測定に活用されています。
リミットスイッチ
設定した位置への到達を検出する装置です。位置の確認や安全停止、終端検出などの用途で活用されています。構造が比較的シンプルで、設備の安全対策やバックアップ用途としても利用されています。
位置発信器
設備の現在位置を電気信号として出力する装置です。制御室や監視システムから設備の位置を把握できるため、遠隔監視や設備管理に利用されています。離れた場所から設備の状態を確認できることが特長です。
開度計
ゲートやダンパー、バルブなどの開閉量を測定する装置です。設備の開閉状態を把握し、監視や管理に活用されています。操作状況の見える化や運転管理に役立つ装置です。
変位計
対象物の移動量や変位量を測定する装置です。設備の位置管理だけでなく、構造物や機器の変形監視などにも活用されています。わずかな変位も検出できるため、設備や構造物の状態監視に利用されています。

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位置センサが活用される主な設備
設備によって求められる機能や使用環境は異なるため、採用される位置センサもさまざまです。以下は代表的な採用例です。
- 自動倉庫・生産ライン
高精度な位置検出が求められるため、エンコーダやレーザー測距センサが使用されています。 - クレーン設備
現在位置の監視や安全停止を行うため、エンコーダやリミットスイッチ、位置発信器などが組み合わせて使用されています。 - 大型搬送設備
移動範囲の管理や位置確認を目的として、エンコーダ、位置発信器、リミットスイッチなどが使用されています。 - 製鉄設備
高温や振動などの厳しい環境下で、安全停止や位置監視を行うため、リミットスイッチや位置発信器が使用されています。 - 水門・ゲート設備
開閉位置の管理を目的として、開度計やリミットスイッチが使用されています。
このように、設備によって位置センサに求められる役割は異なります。そのため、設備ごとの運用条件や目的に応じて適切な位置センサを選定することが重要です。
選定で重要な3つの視点
装置を選定する際は、まず必要な検出精度や制御性能を満たしていることが前提となります。しかし、設備の安定稼働を考えるうえでは、故障時の対応や将来的な更新まで含めて検討することが重要です。
1. 精度・制御性能
求められる停止精度や位置制御性能を満たせるかを確認します。自動運転や設備監視を行う場合は、必要な検出精度や応答性を確保できることが重要です。
2. 保守性・復旧性
故障が発生した際に、原因を把握しやすいか、現場で迅速な対応が可能かという視点です。設備停止による影響が大きい現場では、停止時間を最小限に抑えることも重要になります。
3. 長期運用性
交換部品の供給期間や更新性、後継機種の有無などを確認します。設備は10年、20年と使用されることも多いため、導入時だけでなく将来的な保守まで見据えた選定が求められます。
これら3つは個別に評価するのではなく、設備停止リスクを抑えるために総合的に判断することが重要です。
電子式の特長と課題
特長
電子式は、位置情報を高精度かつ連続的に検出できることが特長です。クレーンや搬送設備、自動倉庫、生産ラインなどでは、取得した位置情報をPLCに取り込み、自動運転や位置制御、設備監視に活用しています。高精度な位置制御やリアルタイム監視が可能なため、自動化が進む設備で広く採用されています。また、設備データの収集や監視システムとの連携にも適しており、IoT化が進む現場でも広く活用されています。
課題
一方で、電子式は粉じんや油分、高温環境、落雷によるサージ、電磁ノイズなどの影響を受ける場合があります。例えば、製鉄設備のような高温環境では電子部品の寿命に影響することがあり、屋外クレーンや港湾設備では雷サージ対策が求められるケースもあります。また、故障時にはセンサ本体だけでなく、配線や制御機器も含めて確認が必要になる場合があります。そのため、高精度というメリットだけでなく、設置環境や保守体制も考慮して導入することが重要です。
機械式の特長と課題
特長
機械式は、カムや接点などの機械的な構造によって位置を検出します。代表的な機器としてリミットスイッチがあります。粉じんや振動、高温環境でも比較的安定して使用しやすく、停電時や電子機器の異常時でも状態を把握しやすいことが特長です。また、接点の状態や調整位置を現場で確認しやすく、電源断時でも設備の状態を把握しやすいことから、保守や点検のしやすさを重視する現場で活用されています。
課題
一方で、一般的には電子式のような連続的な位置情報の取得や、高精度な位置制御には向いていません。また、取得できる情報量にも限りがあります。そのため機械式は、高精度な位置制御を目的とする用途よりも、安全停止や位置確認、バックアップ用途として活用されることが多く、設備の信頼性向上に役立っています。
なぜ保守性・復旧性が重要なのか
設備保全では、故障をゼロにすることは現実的ではありません。そのため重要なのは、故障が発生した際に設備をどれだけ早く安全に復旧できるかという視点です。異常が発生した場合は、センサ本体だけでなく、配線や制御機器、通信系統なども含めて原因を特定する必要があります。
故障発生時には、
- センサ本体の異常なのか
- 配線の断線や接触不良なのか
- PLCや制御機器側の異常なのか
を短時間で切り分けられるかどうかが、設備停止時間を左右します。生産ラインや搬送設備など、設備停止による影響が大きい現場では、停止時間がそのまま生産ロスにつながる場合があります。そのため、検出精度や機能だけでなく、点検しやすい構造であるか、交換しやすい機器であるかといった観点も重要です。
二層化設計が設備停止リスクを低減する
保守性・復旧性を高める方法の一つとして、異なる方式の装置を組み合わせる「二層化設計」があります。電子式と機械式のどちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの特長を活かして役割を分担する考え方です。
例えばクレーン設備では、
- 通常運転
電子式による高精度な位置制御 - 安全確認・バックアップ
機械式による停止位置の確認や安全監視
といった役割分担が行われることがあります。
このような役割分担により、高精度な位置制御と設備の信頼性を両立しやすくなります。
選定で見落としがちなポイント
部品供給や保守体制を確認する
設備自体は継続して使用できても、位置センサだけが入手できなくなるケースがあります。
- 部品供給期間
- 修理対応期間
- 後継機種の有無
- 代替品への更新可否
- メーカーや販売店の保守体制
などを事前に確認しておきましょう。
将来の更新や改造にも対応できるか
長期にわたって運用される設備では、設備本体は継続して使用できても、位置センサだけが生産終了となるケースがあります。また、更新時には既設機器との互換性や制御システムへの影響も考慮する必要があります。そのため、将来の更新や改造のしやすさも重要な選定ポイントとなります。
まとめ
位置センサを選定する際は、単純な精度比較だけで判断するのではなく、保守性・復旧性や長期運用性まで含めて評価することが重要です。
設備によって求められる役割や運用条件は異なります。電子式は高精度な位置検出や自動化に適しており、機械式は安全停止や位置確認に適しています。また、設備によっては電子式と機械式を組み合わせた二層化設計を採用することで、高精度な位置検出と設備の信頼性を両立することも可能です。設備に求められる機能や運用方法に応じて適切な方式を選定し、それぞれの特長を活かして使い分けることが、設備全体の信頼性向上につながります。
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