リチウムイオン電池 (二次電池)とは?製造工程の問題点・原料ロスを防ぐ方法
リチウムイオン電池(二次電池)とは
リチウムイオン電池は、二次電池の一種であり、充電と放電を繰り返し行うことができます。リチウムイオン電池は、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することによって電気エネルギーを蓄える仕組みです。
リチウムイオン電池は、一般的には小型で軽量でありながら、大容量のエネルギーを蓄えることができるため、携帯電話・スマーフォンやノートパソコン、電気自動車などの様々な電子機器や輸送機器に広く使用されています。
また、リチウムイオン電池は安定した電圧を供給することができるため、急速な充電や放電が可能であり、長い寿命を持つことが特徴です。ただし、誤った取り扱いや充電方法などによって発熱や発火のリスクがあるため、適切な取り扱いと管理が必要です。
■社会への貢献・影響
1.持続可能なエネルギー
リチウムイオン電池は再充電が可能であり、再生可能エネルギー源(太陽光や風力など)から
の電力を効率的に蓄えることができます。これにより、持続可能なエネルギーの利用を促進
し、化石燃料に依存するエネルギーの削減に寄与しています。
2.電子機器の進化
リチウムイオン電池の高エネルギー密度と軽量性は、携帯電話やノートパソコン、タブレット
などの電子機器の性能向上に大きく貢献しています。また、電動工具やロボット、ドローンな
どの機械の動力源としても広く利用されており、これらの分野の技術革新を促進しています。
3.電気自動車の普及
リチウムイオン電池は電気自動車(EV)において主要な動力源として使用されており、環境へ
の負荷を低減するための代替手段として注目されています。EVの普及により、排出ガスの削減
や騒音の軽減など、交通の持続可能性を向上させる効果が期待されています。
4.エネルギー貯蔵技術
リチウムイオン電池は、エネルギー貯蔵システム(ESS)としても使用されています。太陽光
や風力発電などの再生可能エネルギーの発電量は時間帯によって変動するため、電力の安定供
給にはエネルギー貯蔵が必要です。リチウムイオン電池を利用したESSは、再生可能エネルギ
ーの効率的な活用や電力グリッドの安定性を向上させる役割を果たしています。
リチウムイオン電池の普及により、エネルギー効率の向上や環境への負荷の軽減、新たな産業の成長など、多くの社会的な利益がもたらされています。しかし、リチウムイオン電池の製造や廃棄物処理においては、材料の供給や環境への影響にも注意が必要です。持続可能なリチウムイオン電池の開発とリサイクル技術の進歩が、社会への貢献と影響を最大限に引き出すために重要です。
二次電池の種類と特長
蓄電池 |
メリット |
安定性に非常に優れており、価格が比較的安い |
デメリット |
使用頻度に比例し徐々に性能が低下し寿命が短い |
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用途 |
自動車バッテリー、バックアップ電源用電池など |
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ニッケル電池
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メリット |
エネルギー密度が高く、過充電・過放電に強い |
デメリット |
自然放電量が大きく、使わなくても電気容量が減ってしまう |
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用途 |
電動工具、非常用電源など |
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リチウムイオン電池 |
メリット |
蓄電池の中でもエネルギー密度が高く、小型化が可能なことに加え、寿命が比較的長い |
デメリット |
鉛蓄電池に比べると高価 |
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用途 |
ポータブル電子機器、ハイブリッドカー用途など |
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ナトリウムイオン電池 |
メリット |
300℃程度の高温で動作する蓄電池。鉛蓄電池に比べ、1/3程度コンパクト。自己放電がなく、充放電効率が高い |
デメリット |
リチウムイオン電池と比べると高価 |
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用途 |
大規模電力貯蔵 |
直近5年の電池の生産量は、一次電池と二次電池の生産個数の割合は約6:4で一時電池の方が多くなっています。
二次電池の内訳はニッケル水素電池とリチウムイオン電池で約100%をしめ、割合は3:7でリチウムイオン電池の方が多いです。
総額では、一次電池と二次電池の割合は約1:9で二次電池が多く、全体を通してもリチウムイオン電池が全体の半分の割合を占めています。
これは、スマートフォン等のモバイルのバッテリーやハイブリッド車への普及が大きいです。
リチウムイオン電池の材料とは?
リチウムイオン電池の製造における材料は主に、正極活物質、負極活物質、電解水、セパレータが主要材料です。
リチウムイオン電池の内部で、リチウムイオンが電解水を介して正極~負極間を行き来することで充放電が行われます。
正極材料には、一般的にコバルト、ニッケル、マンガンの単一または複合の金属酸化物やリン酸鉄系の材料が使用されます。
負極材料には、炭素系材料(黒鉛)や合金系の材料が使用されます。
リチウムイオン電池に使われる材料の埋蔵量は?
充電することで繰り返し利用できるリチウムイオン電池は、携帯電話やモバイル機器、パソコン、ハイブリッド車への使用と今後も需要が広がり続くと思われます。
リチウムイオン電池の生産量に対して原料は足りているのか主要の材料に着目して確認します。
正極材
■コバルト
世界の埋蔵量:約 710 万トン
国別の埋蔵量:コンゴ(50%)、オーストラリア(17%)、キューバ(7%)、フィリピン(4.0%)、ザンビア(3.8%)
参照元:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/5031cf98b023cbd4.html
世界のコバルト鉱石の生産量:1999 年には 25,700 トンであったが 2007 年には 62,300 トンに増加した。これは、中国、日本を中心とした全世界的なリチウムイオン二次電池需要の好調を反映し増加してきた。
最もバランスの取れた正極材料として、これまでメインで使われてきましたが、コバルトが高価な材料であり、かつ価格の変動が大きいため、最近では他の材料の開発が多く見られます。
■ニッケル
世界の埋蔵量:約9,500万トン
国別の埋蔵量:オーストラリア(22.1%)インドネシア(22.1%)、ブラジル(16.8%)、ロシア(7.9%)、フィリピン(5.1%)
これらの鉱床や鉱山は主に赤道付近の地域にあり、このタイプの鉱床からの生産量はこの数十年年で確実に増加しています。硫化鉱の鉱床は南アフリカ、ロシアとカナダにあります。
オーストラリアは硫化鉱とラテライト鉱の両方の鉱床に恵まれています。
もっとも高容量ですが、安全性に問題があり、実用化は難しいといわれていて、量産品では殆ど見られません。
参照元:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/796f22bef5751d43.html
■マンガン
世界の埋蔵量:約 15 億 トン
国別の埋蔵量:南アフリカ(43%)、オーストラリア(18%)、ブラジル(18%)ウクライナ(9%)、ガボン(4%)
参照元:https://resource.ashigaru.jp/list/manganese/country.html
日本においては、多数のマンガン鉱山があったが、昭和 61 年を最後に生産を停止した。主要な鉱山としては、岩手県の野田玉川鉱山、北海道の大江鉱山、上国鉱山、稲倉石鉱山、石崎鉱山、長野県の浜横川鉱山が挙げられる。
負極材
負極材料は、炭素材料が中心となっており、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、MCMB(メソフェーズ小球体)などが需要の中心です。
負極に炭素材料を用いるメリット
①炭素材料がリチウムを吸蔵するため、金属リチウムは本質的に電池中に存在しないので安全
②リチウムの吸蔵量が多く高容量が得られる。
負極材料(負極活物質)は、2018年における世界生産量が約20万トンで、販売金額が約2,300億円と見込まれます。
負極材料には、グラファイト(黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、合金系などが流通しています。
現在の負極材料市場の約9割はグラファイト系材料で構成され、モバイル機器の他、車載や定置用などのほぼ全ての用途で使用されていますが、電池用途の多様化に伴い、様々な負極材料が開発されています。
負極材料は、電池のエネルギー密度と出力特性、サイクル特性の他、温度特性や安全性などの重要なパラメータに大きな影響を及ぼします。
グラファイト系材料は、天然黒鉛と人造黒鉛に分類できます。天然黒鉛は、採掘された天然黒鉛鉱石(石墨)を粉砕し、浮遊選鉱後フッ酸処理を行って黒鉛純度を高めることで製造されています。
天然黒鉛は、歪な粒子が多く含まれ、充電時に電解液が分解されやすいため、電池の不可逆容量が大きくなります。そのため、天然黒鉛の表面に耐分解性に優れた人造黒鉛を被覆造粒して対策がなされています。
グラファイトは、エネルギー密度、サイクル特性、出力特性などのバランスに優れた材料ではありますが、低温環境や高温環境では、安定した動作がしにくいという欠点があるため、電池の温度管理が重要になります。
リチウムイオン電池の製造工程における問題点
リチウムイオン生産ラインの除塵対策として、集塵機が多く使用されています。
しかし、某メーカーの工場では、集塵機のろ布交換後の設置ミスや劣化などで全工場の集塵機からは、毎月9トン以上もの原料が回収されず漏れていました。
会社にとっては約2700万円/月の損失計算になり、更に大気汚染の問題にもつながりました。
その問題の解決事例はこちら